ガラスの可能性

猪熊弦一郎美術館と、少しだけガラスのお話

2021/06/10

猪熊弦一郎美術館


こんにちは!安藤です。先日、香川県丸亀市にある「猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)」に行ってきました。今回はその時に感じたことを投稿します。

猪熊弦一郎氏とは?

猪熊弦一郎という作家をご存じでしょうか?美術に興味が無い人にまで知られるほど有名ではありませんが、個人の名前を冠した立派な美術館ができるぐらいの日本を代表する現代芸術家です。

1993年に90歳でお亡くなりになっていますが、美術館のエントランスからも想像していただけるように、お歳のわりに、とてもポップで明るい、「女子ウケよさげ」な作品を多く残されています。抽象的なものや猫を扱った作品など、肩ひじを張らないで見ることができる現代美術です。

「美術館は病院、家で見る絵はビタミン剤」

今回の企画展は「アートはバイタミン(ビタミン)」です。彼が生前におっしゃった「美術館は病院、家で見る絵はビタミン剤」という言葉に沿って暮らしや生活の中につくられた作品を紹介するものでした。主にパブリックアートや日常品のデザイン作品、猪熊氏の生活そのものが展示されていました。

そしてなんとうれしいことに、館内すべてが写真撮影OKということでしたので、遠慮しながらもたくさん撮ってきました。ご覧ください。

博物館クラスの生活雑貨と、クリアな展示ケース

美術館には小さな日用雑貨やミニチュアの家具など、生前にご自宅にあったものがそのまま展示されていました。博物館並みの展示数に驚きました。イサムノグチやコルビジェなどとも交流があったようです。やはり、豊かな感性は日々の生活空間によって培われるのですね。また、「心の健康」って大事だなとあらためて感じました。
作品とは関係ありませんが、上の写真(左)の大きな展示ケースは板ガラスで出来ていますが、右のショーケースにはアクリルが使われていました。切り口の拡大部分の色にご注目ください。ガラスでこれほど透明度の高いものはありません。高透過ガラスでも、もう少し緑がかって見えます。職業柄こんなところにばかり目が行きます(笑)

吉村順三が設計した田園調布のご自宅

田園調布のご自宅は吉村順三様の設計です。(←あこがれの建築家なので神様扱いです)私はこの模型の前で、お家にご訪問することを空想しながらたっぷり時間を過ごしました。豪邸とは言えないかもしれませんが、螺旋階段や2階の明るいリビングなど、うらやましい限りのお家です。壁に大きな絵を飾ったらおしゃれなギャラリーになりそうですね。

三越百貨店の包装紙も猪熊氏によるデザイン

三越百貨店の包装紙は猪熊氏のデザインです。他にも街中にある壁画やポスター作品などを手掛けており、デザイナーとしても活躍されました。

200点以上の作品が展示されています

一般的に美術館での写真撮影は禁じられていますので、「ご自由に撮影してください」といわれても、作品を撮影する時には誰かに怒られそうで緊張しました。
猫の絵です。ほとんど白黒だし、顔の表情もかわいく描いているわけではないので一歩間違えるとグロテスクになりそうなものですが、猪熊氏の手にかかるとどこかユーモラスでキュートになってしまいます。うちにも猫が二匹いますがまさにこんな感じです。ここまでデフォルメしているのになぜこんなに特徴を表現できるのでしょうか。


常設展の猪熊氏作品です。3階まで吹き抜けの大空間に200号以上の作品が展示されています。だんだん行ってみたくなっていただけたでしょうか?

巾木を使わずガラスを納めることについて

最後にガラスのお話を少し。3階に上がる階段にすっきりとした納まりでガラスが使われていました。見た目を最重視するために巾木を使っていません。工務店さんは苦労されたことだと思います。モップ掛けのときにコツンとぶつけたり、ワックスがガラスに付かないように養生したりと、お掃除される方のご苦労が偲ばれます。
しかしこのガラス、階段に沿ってダンダンにカットされているわけではないと思います。それはあまりに割れるリスクが高く、また造作が難しすぎるので、たぶん、斜め一直線のガラスをダンダンの鉄板で隠しているのだと思います。

きれいで無駄にコストがかからない洗練された納め方です。Good!

美術館に行ってみて感じたこと

ガラスは美術館に展示されている絵画や写真の額縁、ショーケースなどに用いられ、作品を守りつつ、観る人に作品を忠実かつ、美しく魅せることができるのだと感じました。ガラスは、私たちの日常生活に欠かせない存在であると同時に、美術、芸術、建築など心を豊かにしてくれる世界でも多彩な活躍をしています。これからも、様々な用途で活用されるガラスを探しに行きたいと感じました。

ライター

安藤

安藤

この道30年。ガラス、鏡のことなら何でもおまかせ! 寝ても覚めても頭の中はガラスと鏡でいっぱい(笑) 正しい知識でガラスと鏡の購入をしっかりサポートします。