スリガラスとは?フロストガラスとは?目隠し効果のあるガラスの違いを紹介!
2024/09/18
こんにちは!ドクターKです。みんなからは「博士」って呼ばれています。
最近はスリガラスを目にすることがメッキリ少なくなりました。
「えー?けっこう見るよ!」と思われたあなた。あなたの思っているそのガラス、本当はスリガラスではないかもしれませんよ。
スリガラスのような目隠し効果のあるガラスについて、ガラスのプロが、しっかりと解説させていただきます。
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目隠し効果のあるガラスあれこれ
ガラスの最大の利点は光を通しながら空気を遮ることができることです。
光の明るさはそのままに、光を拡散だけさせたものが「スリガラス」「フロストガラス(タぺストリー)」「型板ガラス」などです。
色や輪郭をぼやけさせて姿かたちをはっきり見えなくするため、透明なガラス窓にレースのカーテンを掛けるよりプライバシー保護効果があります。明るいのに目隠しになるわけです。
ただし、これらのガラスに光を遮る効果はないので、部屋を暗くしたいなど、使用する状況によっては遮光カーテンは必要です。
それでは各ガラスの見え方や特徴をご説明します。
①スリガラス
透明の板ガラスの表面に砂を吹き付けて傷だらけにしたものがスリガラスです。サンドブラストと言います。
もっとも簡単な作り方なので料金は比較的安価です。日本では明治初期から窓ガラスとして使われています。
(日光田母沢御用邸)
光が細かく乱反射するので真っ白に見えます。たまに「白いガラスないですか?」と聞かれますが白い塗料を塗って作っているわけではありません。傷があることから割れやすいので、最近は屋外との窓ガラスに使われることは少なくなりました。サッシの割れ替えをお考えの方は間違って注文されないようご注意ください。
実際にスリガラスを通すと、このような見た目になります。
②フロストガラス
透明なガラスをまず砂を吹き付けてスリガラスにした後に「フッ酸」という薬品(劇薬)で表面を溶かしてスリ加工の傷をマイルドに加工したガラスです。タペストリー加工とも言います。
見た目もスリガラスよりは透明感があり現代的なインテリアに似合います。高価ですが汚れも付きにくくお掃除も楽なため、スリガラスに代わり普及しています。サッシに使うならば、こちらがおすすめです。
フロストガラスはこのような光の通し方をします。
先程紹介したスリガラスに比べ、透明で柔らかなイメージがありますね。
③型板ガラス
ガラスの片面に凹凸模様(パターン)をつけることで光を柔らかく拡散させたガラスです。
フロートガラス、スリガラス、フロストガラスに比べて製法が簡単なので料金も安めです。カスミ模様は住宅のサッシにもっとも普及していますし、梨地模様は昔から屋内の引戸に使われてきました。
そのほかにもレトロ調なチェッカーガラスやモールガラスも型板ガラスの仲間ですし、ヨーロッパでデザインされたおしゃれな模様や色付きのガラスなど、たくさんの種類があります。
型板ガラスを通すとこのような見え方になります。
凹凸の模様がわかりやすく、他の2種類とはまた異なった見え方をするのがわかります。
型板ガラスには様々な模様があるので、雰囲気に合わせた模様選びをできるのが特徴です。
型板ガラス(コーワガラスショップ)
水濡れ、汚れについて
時代劇などで部屋をのぞき見するときに指でぷすっと障子に穴を開けますが、スリガラスに「つば」をつけて透明にする方法も、むかし何かで見た覚えがあります。
果たしてそんなことは実際に可能なのでしょうか?
それぞれのガラスが濡れた時や、汚れた時の見え方の違い、またメンテナンスについても解説します。
水にぬれると
雪が白く見えるのは何故かご存知でしょうか?もちろん、白いペンキが混じっているわけではありませんから、雪の後ろにあるものが本来なら透過して形が見えるはずです。
しかし雪の表面の細かい凹凸のせいで、光が直行せずあらゆる方向の光が混ざって目に届くことになります。光は波長が混ざると白色になります。スリガラスが白く見えるのも雪と全く同じ原理です。スリ加工の傷による光の乱反射のせいで白く、形がぼやけて見えるのです。
ところが水にぬれると乱反射が抑えられ透明に近くなってしまいます。例えるなら雪が溶けて水になることと同じといえます。
スリガラスにセロテープを貼ると驚くほど透明なガラスになることはご存知でしょうか?この現象も濡れた時と同じで、表面の凹凸が無くなり光がまっすぐ透過することにより起こります。
(セロテープにより、スリガラスの一部が透明になっています)
汚れが付くと掃除が大変
最近スリガラスがあまり使われなくなった理由として、汚れが付いた時に落ちにくいという欠点があります。手で触っただけで手の油分が残って濡れたようになりますし、クレヨンや鉛筆で落書きなんてしたら大変です。これは細かく鋭利な窪みに入った汚れが浮き出しにくい事が原因です。
お掃除の方法としては、入り込んだ汚れを溶かして洗い流す必要があります。ブラシやスポンジでは物理的に届かないので、汚れに適した洗剤や溶剤が必要です。汚れたタオルで拭くと逆に汚れが取れなくなるので注意しましょう。
とくにセロテープを貼った跡が取れないというご相談をよくいただきますが、これはセロテープの糊が除去できないことが原因です。中性洗剤では溶かすことができません。除光液やシンナーなど有機溶剤であれば、糊そのものを溶かすことができますが、やはりお掃除がとても難しいことに変わりはありません。
一方フロストガラスや型板ガラスは窪みが滑らかなので、汚れや油分が浮きやすくお掃除が非常に楽です。
こんな場面にはこのガラス
厚さ、汚れ方、テクスチャー、強度、値段・・・
ガラスを選定する要素はたくさんあります。ガラスの特徴を理解して適切なガラスを採用してください。
①パーテーションには
パーテーションに限らず屋内用の間仕切りにはデザインが豊富な型板ガラスやフロスト(タペストリー)ガラスがよく使われています。メンテナンスが簡単なことも理由の一つです。
もちろんスリガラスも使えますが上述の通り、汚れが付くとお掃除が大変なのでレストランや手に触れる場所にはお勧めできません。
②和室の引戸
昔は屋内、屋外にかかわらず、引き戸にはスリガラスがよく使われていました。かつて、目隠し効果のあるガラスはスリガラスしかありませんでした。
複数連続した窓ガラスの割れ替えなら同じスリガラスが必要かと思います。ただ、スリガラスはサンドペーパーと同じで「スル」砂粒の粒度によって粗さが変わりますし、十数年ほど時間がたつと表面が滑らかになって透明に近くなり、新しいものと見た目が変わってしまうことに注意が必要です。
③テーブル天板
スリガラス、フロストガラス、型板ガラス、いずれもガラス越しの光をボヤけさせますが、それはガラスからの距離が離れた場合に限ります。ガラスにぴったりくっついている場合はぼやけずに普通の透明ガラスと同じように見えてしまいます。テーブルにピッタリつけて使用する場合はこれらのガラスを使用する意味がありません。
白色もほとんどなくなりますのでご注意ください。写真のように3センチほど離すと白い本来のスリガラスの見え方になります。
ネットで、自由なサイズで、簡単に買えます!
今回解説したガラスは、どなたでもオンラインで購入することが出来ます。
もうどんなものを買うかは決まっていて、後は買うだけ!という方はこちらの自販機が大変便利です。
強化加工ができる
型板ガラスをのぞく他の板ガラスは強化加工が可能です。大きくて破損事故が心配な場合や、テーブルトップや棚板に使用する場合は検討に加えましょう。耐荷重は約3倍、料金は1.5倍ぐらいになるとお考えください。
強化ガラスの加工手順は以下のようになります。
①透明フロートガラスを完成品サイズに切断し面取りなどエッジを仕上げる
②強化加工焼き入れ~冷却を行い強度試験を行う
③サンドブラスト(スリ加工)を行う→スリガラスの完成
④フッ酸による液処理を行う→フロストガラスの完成
スリガラス、フロストガラスは最後に表面加工を行いますが、型板ガラスは最初から凹凸模様があるので強化ガラスにはできません。熱で高温にするので模様が溶けてしまうからです。
厚みが欲しい!
スリガラス、フロストガラスはフロートガラス(透明なガラス)として出来上がったものを二次的に再加工するものです。フロートガラスには厚さのバリエーションがたくさんありますので、それと同じだけの厚みのスリ、フロストガラスがオーダー可能です。ただし薄いと割れやすいので対応できないものもあります。
それに比べて型板ガラスは元々パターンを付けて製造されるものなので厚さの選択肢は少ないです。
スリガラス、フロストガラス 3,4,5,6,8,10,12,15、19
型板ガラス なしじ模様2mm、かすみ模様4mm6mm、チェッカーなどデザイン系4mm
一般的に使われる厚さとしては以下のようになります。大きさや使用環境などから安全な厚さを選ぶことになります。実際に割れたものを測れるならいいのですが、新しく作る場合や無くなってわからない場合は、ガラス屋さんに確認してみましょう。
室内の引戸 2mm~4mm
屋外とのサッシ窓 4mm~6mm
棚板やテーブルトップ 5mm以上
防犯、耐熱、防音ガラスなど特殊なガラス
防犯ガラスや耐熱ガラスなど特殊な用途で使われるガラスも、プライバシー効果が必要な場合にスリ加工やフロスト加工が可能です。通常販売していなくても特殊対応してもらえるかどうかガラス屋さんに問い合わせてみましょう。
まとめ
まとめるとこのようになります
スリガラスは、透明ガラスを二次的に再加工して作られている
フロストガラスは、スリガラスを再度液処理して作られている
型板ガラスは、最初から模様を押し付けて板状に作っている
スリガラスの長所 値段が安い 厚さが豊富
スリガラスの短所 割れやすい 汚れが付きやすく落ちにくい
フロストガラスの長所 割れにくい 汚れが付きにくく落ちやすい
フロストガラスの短所 値段が高い
型板ガラスの長所 値段が安い デザインが豊富
型板ガラスの短所 厚みが少ない
【動画】ネコロボ事件簿「すりガラスだと思ってたのに!」
ライター
博士
鏡とガラスの専門家・ドクターKです。「博士」と呼ばれています。皆さんがよく巻き込まれるトラブルの原因やメカニズムを動画やコラムでわかりやすく解説します。